ケンちゃん、ゴンちゃん・・・・
ケンちゃん、ゴンちゃん・・・・・・と言っても、漫才師ではありません。
ゴンちゃんのほうは、私方の飼い犬。
じゃあ、ケンちゃんは?・・・・
先日、日課のゴンちゃんの夜の散歩の途中の出来事・・・・聞いてくださいます?
ゴンちゃんは、雄のしかも大型犬です。散歩は街が静かになった頃の時間に出掛けます。
街中で人と出くわすと、大変です。狭い歩道で、女の人と行きあった時は困りました。
向こうからどんどん歩いて来るので、「 ああ、この人、犬は大丈夫なんだ・・・」と思い
私の方も躊躇なく歩を進めた訳です。
出会いがしら、 「 ギャ~ッ ! 犬、怖い~ !! 」と騒ぐので、私は体で犬を歩道の柵に押しつけて、
「サァー大丈夫ですョ! 後ろを通って下さい 」と言ったら、「ムリ、ムリ、ムリィ~・・私、犬アレルギ-やしィ」
と騒ぎたてるのです。ホントに困りました。 その様な訳で、犬の散歩は街にすっかり人影が無くなった頃 出掛けます。
その日も、夜更けてのゴンちゃんと散歩の途中・・・・・
後ろに何か気配の様なものを感じたのです。 人でもないし、車でもないし、自転車のようでもない・・・・
今までに出会った事のない物(者)の気配です。それは、振り向く間もなく私の横まで走って来ました。
黒い、大きな影の塊・・・何だろう? 、子牛くらいの大きさはある !! とにかく、デカイ !!
次の瞬間、それが雄の土佐犬だと解った !!
思いだした・・・そう言えば、この辺りに闘犬に出す土佐犬を飼っているお家が在る事。
犬の名前は゛ ケン ゛・・・。 2代目で、初代のケンは闘犬の試合の直後、死んだと聞いた。
我が家のゴンは、引き綱を切らんばかりにエキサイトして、黒い影の塊に吠えかかる !
それにしても、大きさが違いすぎる ! しかも、相手は現役の闘犬。周りに助けを求める家も無い !!
モー、選択肢無し! 戦うしかないのだ !!
= ゴン、お前だって、土佐犬やぞ ! 雄やぞ・・ ( まがりなりにも ) 闘おう ! =
只、ゴンちゃんは、闘犬をするように育っていない。赤ん坊の頃から毎日店に連れて来て、お客さん達に
可愛がられて、可愛がられて大きくなって、怖いルックスとは裏腹大変な甘えん坊犬だ。
それに、優男だ。
ゴンちゃん、一噛みで殺られるかも・・・・でも、腹をくくって、覚悟して、闘え !!
私も自身に気合を入れていると、何か相手の土佐犬、ケンの様子がおかしい ?
ちっとも凄惨な気配が感じられないのだ。
「 ケンちゃん・・・・ 」 聞きおぼえていた相手の土佐犬の名を呼んでみた。尻尾を振ったように思えた。
「 ケンちゃん、可愛い !! 」 ともう一度呼んでみた。今度は思い切り、紐の様な尻尾をひらひら振った。
その時、ケンちゃんの飼い主さんが息せききって走って来た。
手に持った綱がゴンちゃんの引き綱よりずっと太い。
飼い主さんは、「 すんまへん ! すんまへんな~ !」 、そそくさとケンちゃんの首輪に綱を付ける。
「 すんまへん! 」と繰り返す飼い主さんに引かれて、ケンちゃんは団地の建物の角を曲がって行った。
「 ケンちゃ~ん ! 」と呼んだら、2度ふり向いた。
ほんの数分の内に、恐怖や覚悟や安堵や慈愛や・・・・相反する状況が連れもって訪れた。
ハァ~、 怖かった !! 疲れた !! でも、可愛かった !!