鳥獣戯画を見に行った….
雨の中、思い立って早春の京都散策に出た。
嵐山渡月橋の辺りを傘をさしてぶらぶらしてから、嵐山高雄パークウェイに
のぼった。 雨降りとはいえ、ここまでとは想像していなかった。
乳色の霧は、一望できるはずの京都の町どころか、周りの景色すべてを
包みこんでいる。 保津川が見える場所を通りかかった。霧の間に川が
見える…..右が上流で亀岡の方か? じゃあ、こっちが嵐山の方角だ。
わ~ッ!! 上から見ると、こんなに蛇行しているのだ。
ここを川下りして来る訳だよネ~。 アッ、鉄橋が見える、トロッコ列車が
通るよネ~。 立て看板の時刻表によると、10分後にトロッコ列車が
通過するらしい。 しばらく車を止めて見ていよう………と思う間もなく
霧が白粉を刷いたように川を消して、鉄橋も消してしまった。
出会う車も無い。 真っ白な世界は、そのまま幽玄の世界にでもつな
がって行きそうだ。
『鳥獣戯画を見に行こう……』、この先に、そのお寺が有るはずだ。
世界文化遺産、京都栂山 高山寺……
濡れた参道を登って行くと、何とも清浄な空気の中、上品な門に辿りついた。
(遺香庵 )
大原三千院にも似た感じの庭で、霧の掛った向かいの山並を借景に手入れのとどいた
苔庭を楽しんだ。『鳥獣戯画』の描かれた巻物が、ガラスケースに保管されお堂の脇の
部屋に展示されていた。子供の頃、教科書で見た、蛙や兎が相撲をとって戯れる絵が
目の前に広がった訳だが、もっともっと沢山の絵巻に成っている事に驚いたし、また
それぞれにすごく良い絵な訳ですヨ。 ホントに、線が美しいのです!
動物の動きが、すごいのです!
( 国宝、石水院) (乙巻に描かれた獅子の絵)
帰り際、どうしても記念に何か買って帰りたく思い………….4巻有る鳥獣戯画の巻物の
ミニュチュアを売っていた内の乙巻を買って帰った。
10cm程のミニチュアの絵巻物は、なかなか表装もしっかりしていて、夜な夜な広げて見ると
乙巻は、麒麟や獅子、龍の様な架空の動物も描かれていて、絵巻の中で、生き生きと動いて
いる。同梱の注釈を読んで驚いた…..甲巻、乙巻は鳥羽僧正の筆で、丙巻から後は、鳥羽僧正
の筆ではないと…….他者の筆だと専門家の解説が載っていた。
庫裏の受付で巻物を注文した時、『どの巻になさいますか?…..』と聞かれた。
迷わず、『麒麟が走っている巻を下さい!』と言った。私は、ちゃんと鳥羽僧正筆を選んでいた訳だ。