陳凱歌 『さらば我が愛 覇王別姫』
ケーブルテレビの番組表で、『さらば我が愛 覇王別姫』の放映を知った。
主演のレスリー.チャンが存命の頃だから、もうずい分前に成るけど、この映画を
観て、本当にすばらしい映画だ!!と感動した記憶がある。
( レスリー.チャン演じる別姫 )
迷わず、J-COMに電話。
つまり我が家の、ケーブルテレビのチャンネルでは放映されない、有料チャンネル
である為だ。 504....衛星チャンネル。
わずか30分前の申し込みでも、ラクラク放映時間に間に合った。
『 ウ~ム、すばらしい!! 』.....
観終わって、しばらくの間、瞑目し、そして沈黙......。
おしゃべりしようものなら、私の中に満々ている何かが、言葉と一緒に
こぼれてしまう。 目を開けて何かを見てしまったら、映画の場面が
薄まってしまうかも...
( レスリー.チャンの別姫が綺麗.....)
時代は、中国で文化大革命の嵐の只中、毛沢東の妻、江青はじめ4人組の
悪政下、紅衛兵に依りずたずたに翻弄される、京劇 『覇王別姫』の覇王役の兄、
別姫役の弟、兄の妻、捨て児の赤ん坊を拾って育てた小四と言う少年
京劇の団員、関係者達。
時代背景の有る映画が好きだ。
それにしても、陳凱歌監督のこの映画、本当にすごい!すご過ぎ!
北京で京劇を見に行った時の演目も、『 覇王別姫 』であった。
覇王は項羽で、別妃は虞美人である訳だけど、その様な古から
今日に至るまで、『 覇王別姫 』の物語のどの部分が中国で
人々の心の琴線にふれ、こんなに永く支持され観続けられる
のであろうか?
映画の中で、2人のお師匠さんが、度々口にした.......
『 人には定められた運命がある。あの覇権を誇った覇王でさえ
滅びる運命は、避けられないのだ.....』と言う事なのだろうか。
それとも、あの覇権を誇った覇王に滅びの時が来て...その時
自分の周りを見渡したら、愛馬と愛妃だけであった。逃がそうとしても
逃げず、『 覇王に殉ずる 』と言う。
弱い立場の者達の、この健気さに人々が感動するのだろうか...?
(別姫は、覇王の為に最後の舞をまう。北京の京劇舞台)
(そして、覇王の剣を取り、自らの命を絶った。北京の京劇舞台)
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そして、もうひとつだけ気持に引っ掛って、考え込んでしまった事が有る....
覇王役、別姫役の2人の京劇役者は、街に捨てられていた赤ん坊を
拾って育てる。 文化大革命の中で育った小四と名付けられた青年は
別姫の役を無理に奪い、紅衛兵に自分の命の恩人を告発する。
日本人的なメンタリティーでは、理解が及ばない部分だ。
もし、時代の空気の中で少年が育つのだつたら、会津の白虎隊の少年達は
存在しないだろう。
錦の御旗をかざしてやって来る、官軍にシンパシィーを感じる...という事だから.....。
やはり、お国により、メンタリティーが違うのだと感じた訳だ。
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紅衛兵に依り、互いが互いを非難し合う場に引き出され、そこで決定的に築いて来た
信頼感はこなごなに破壊れ、覇王役の兄の妻は自殺する。
十数年ぶりに、覇王役の兄と別姫役弟は邂逅し、2人だけの舞台を演じる。
覇王役の兄は、息切れを訴えた。
袂を分かった間に流れた年数の多さが垣間見える......そして、ラストシーンへ
別姫は、覇王の腰から刀を奪った。
そして、別姫の運命に重ねて自らの命を閉じた.....。