五社英雄の映画….
五社英雄監督の映画の良さが、この頃、ぐっと解って来た!
五社監督の映画で、すぐ思い浮かぶのは、夏目雅子存命最後の頃の
映画 『 鬼龍院華子の生涯 』 、あのお嬢様然とした夏目雅子が
『 なめたら、いかんぜよ! 』…….と, 啖呵をきる、アレアレあの映画。
他に、『吉原炎上』 『極道の女たち』 『櫂』……
けっこう濃い映画が多い。 今回、五社監督映画にハマりそうに
なったきっかけの映画は、『 薄化粧 』、タイトルとは裏腹、やはり濃い!
ものすごく濃い映画だった。
ハマるきっかけは………
週刊誌の春日太一のコラム、藤 真利子《地獄の魔性》を読んだ事による
女優、藤真利子演じる『女』は、簡単に手を出す事が出来る。
一途に惚れてくれるし、どこか可愛いらしい….しかし手を出したが
最後、ぬきさしならぬ地獄への一本道。
そこから脱する方法は男女どちらか、もしくわ双方の破滅しかない。
そんな女を演じたら、藤真利子をおいては他に居ない……..
という事で、私も藤真利子は、好きな女優だから、さっそくDVDを買って
見る事にした。
五社英雄監督の映画のすごくおもしろいところは、登場人物に、製作者の
総意ではないか……と思わせる様なセリフを語らせるシーンが有る事だ。
『薄化粧』の場合は…….大村昆扮する、退職して異業種に再就職している
老刑事が、職場に訪ねて来た後輩刑事に語るシーンだ。
老元刑事………..
『 刑事をしている時は、見えなかった事が、こうして違う職種につくと
あの時は、実はこうだったのではないか?….と云うように、突然気付く事がある。
あの坂根という男は、女好きなんや! そりゃあ男は誰かて女好きやけどナ~、
何て言うのかナ~…..坂根は良い女に出会えんかったんヤ。
次々、女が出来ても、み~んな良うないんやナ~。
何か、わてナ~、あいつが可哀そうになってナ~。
良い女というものに出会う事が出来てたら!~ 、又、違った行き道が有っただろうに…』
そして、人は生きるために、心に化粧をする……そうです。
すごい含蓄のある言葉でしょう~。
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五社映画、続けて、『人斬り』を見た。
云わずと知れた、幕末、土佐の岡田以蔵の話し..。やはり、映画の中で、
坂本龍馬の口を借りて含蓄のあるセリフを語るシーンが有る訳だ。
龍馬….『その日の不猟を犬のせいにして、猟師は犬を苛め抜く。 犬は
何とか主人に認めてもらおうと、一日中走り続けた体に鞭打って、山を
駆け回り、やっと日暮れ近く、一匹のウサギをしとめた。しかし、あせって
乱暴に捕まえた為、肝臓を傷つけてしまい、肉に苦い汁が廻ってしまって
ウサギの肉は使い物にならなかった』
以蔵…..『アア、知ってるぜ!その話は…..。ガキの頃、爺さんから何度も
聞かされたから~。 急がば廻れ!って事だろうが….』
龍馬….『以蔵、その話しには続きが有ってナ…….。猟師は、この犬は
もう使い物にならん!と言って、殺して鍋で煮て食べてしまったんだ。 』
人に命じられたままに、刺客をやってはいけないのだ!…….という龍馬の
忠告は、全く、岡田以蔵の心に届かなかった。 結果、以蔵は侍としては
屈辱的な刑で命を終える訳だ。
忠告が忠告として生きるには、享ける側に十分な享けるだけの素養が
ないことには成立しません。 史実では、龍馬に頼まれ、勝海舟の
護衛をした時、海舟から忠告があったとも……….。 せっかく、こんな
すごい忠告を、こんなすごい人達からもらいながら、以蔵が云った事は
『 俺の護衛が無かったら、あんたの命は無かったぜ! 』だった。
なんか、悲しいネ!
考えたら、我々の日常にもこの様な話しは、いっぱい有る訳だ。
ウ~ム、ウ~ム、映画って、すばらしい!!