柱本の居酒屋奇譚
休日の夕方、近所の居酒屋をのぞいてみた。
桟敷席もカウンター席も満席。
「 満席やし、又来ますワ~ 」とママに言うと、
「 待っといて~、すぐ片付けるし・・・・・」と言う。
空いた席は無かったはずだ! どこを片付けるというのだろう?
しばらくすると、「 ハ~イ、お待ちどうさん。 どうぞ~ 」とママの声。
店の中に入った。 片付けたのは客が帰った後のテーブルではなかった。
すでに座っているお客さん達を片付け整理した訳だ。
4人用の桟敷席には6人の客が座っている。外側の客は、通路に足を伸ばして
ブラブラさせている。 かなり窮屈そうだ。
手前の桟敷席に、私達用の空きテーブルが一卓こさえてあった。
恐縮しながら席に座ると、「 かまへんで~、入り、入り・・・」とお客さん達が手招きする。
柱本という町は、おもしろい町なのだ!
東を淀川で、南を農業用水路で、西を工業地帯で、遮られて寝屋川市、摂津市、茨木市と
それぞれ隣接する。町がず~と続いていないから、医院の待合室でも、スーパーに買い物に
入っても、皆、顔見知りだ。 ここは都会の中の、大きな村なのだ。
11人の客とママとお手伝いの人と総勢13人で、狭い店の中は破裂しそう。
皆でTPPを論じた。 そこは、飲み屋会話で、この世論を2分する様な大議論も、鋭さに欠ける。
カウンター席のおじさんは、議論で喉が渇いたのか、「 ママ~、もう一杯入れて! 」とジョッキを
高く上げた。
「 ○○さん、もうアカン!!・・・今日は、もうアカンで!! 」 ママは困った顔をする。
「 客が注文しているのに何で売らんのや! 」とおじさんのテンションは高い。
「 これ以上飲んだら、○○さん、家に帰る途中道路で寝るやん・・・・・」とママ。
他のお客もママに味方して、「 おっちゃん、今日はもう帰り・・・」と言った途端
おっちゃんは立ちあがって、「 俺はナ~、九州男児ヤ! 俺を侮辱すると
ハッ倒すぞ~ !。 もう、2度と来んからナー!この店には・・・」といきり立った。
店内のおばさん客が、怖がるかナ~と心配したけど、存外平気な顔で「ハイハイ
明日も又来てたら承知せえへんで~・・・・」 と言う。
なんと恐るべし、応酬話法!!
いきり立っていたおっちゃんは急におとなしく成って、「 明日も来てエエか・・?」と
媚びた。
お客の中に高校生のカップルが居て、この場面刺激が強すぎないか心配で聞いてみた。
「 ぜんぜん、平気です! 」と、アッケラカンと答えた。
この場面・・・・・可笑しいけど、結構複雑。
「 甘辛い 」 「 痛し痒し 」 「 嬉し恥し 」 ・・・・みたいな感じで、相反するものが
混ざっている気がするのだ。ある程度、人生経験を経て感じる感覚なのかな~?
カウンターに座っていた青年は、中学生の頃から芸能活動をしていて、タレントの後ろ
で踊っている。普通の青年に比べると、やはり華がある。
上目使いでビールを飲みながら、店内の客のやりとりをじっと見ている。
かくして、あっという間に居酒屋としては異例に早い閉店時間が来てしまった。
pm9:00。 解散、撤収、よく飲んだ~ ! 楽しかった、
また、ごいっしょしましょうネエー